ちくま版水滸伝
第1巻 広告ブロック時用リンク 価格 950円+税
第1巻は引首から第15回までを収録している。内容的には史進、魯智深、林冲、楊志の物語全般と晁蓋の物語の序盤までである。序盤の面白さについては、主人公ごとにジャンルを変えている所にあると感じられる。
つまり、史進編は戦った相手との友情を深めていく少年漫画的な趣があり、魯智深は暴力的なコメディ要素が強い。一転して林冲編は理不尽な悲劇の物語であり、楊志編もまた悲劇ではあるが、林冲の理不尽と比較すると自業自得の破滅の物語であるように思われる。
第2巻 広告ブロック時用リンク 価格 1000円+税
第2巻は第16回から第30回までを収録している。主役は楊志、晁蓋、宋江、武松と切り替わり、武松編の途中で終わる。第1巻と同じく、主役が切り替わるごとに物語のジャンルが切り替わるという印象を受ける。
楊志は第1巻で触れているように自業自得の悲劇である。晁蓋は事件が起きてから事件のギミックを解説するサスペンス、宋江は痴情のもつれを主題とする愛憎劇と続く。
武松はこれまでの各ジャンルの集大成であるように思われる。つまり、虎退治や蒋忠との戦いは魯智深的なコメディ、西門慶、藩金蓮、武大の人間関係は宋江的な愛憎劇、武松による武大の仇討ちは晁蓋的なサスペンス、張青や孫二娘とのやり取りは、史進的な敵対からの友情の物語、鴛鴦楼の虐殺事件は林冲的な理不尽な悲劇を踏襲していると考えられる。
楊志的な要素は見出すことができない。現状では、責任から逃げ続けて追い詰められていく自業自得の物語が楊志編のコンセプトであると認識しているが、作者の想定しているコンセプトは別にあるため、それに気付いていないのかもしれないし、そもそも武松編がそれまでのテーマの集大成であるという認識に誤りがあるのかもしれない。その分析は今後の課題である。
第3巻 広告ブロック時用リンク 価格 1100円+税
第3巻は第31回から第43回までを収録している。武松編の後半を終えた後は宋江と李逵のエピソードとなる。宋江編以降、よく言えば話が一貫性を帯び、悪く言えばワンパターンになる。
3巻内の内容に限っても、青州と江州の構成は非常に似通っている。まず、宋江はアウトローに捕らえられて窮地に陥るが、名乗りを上げたことで助けられる。次に善玉の役人の庇護を受けるが悪玉の役人に目を付けられ、善玉の役人とともに捕らえられる。最後にアウトローが宋江らを救い出し、悪玉の役人に報復するという点である。
特に宋江が名乗ったことで敵対的なアウトローが一転して心服するというシチュエーションは多すぎてうんざりする。青州ならば燕順らだけであるが、梁山泊へ向かう道中で呂方らと石勇も同様の反応を見せ、江州では李立、張兄弟、穆兄弟らが加わる。アウトローではなく善玉の役人である戴宗もこの部類である。
後に梁山泊の頭領となる宋江のカリスマ性を強調したいのは分かる。しかし、宋江の卑賤な人物造型も相まって不自然に感じられる。さらに言えば、この辺りから理不尽で胸糞の悪い描写が増えはじめる。具体的には、第34回で宋江が秦明を陥れる際の描写や、第41回で黄文炳を惨殺する時の描写である。